★北杜市郷土資料館
 常設展「ほくと歴史の杜紀行~大自然に育まれた郷土の文化~」

★北杜市考古資料館 
 常設展「遺跡から探る北杜の歴史」
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https://hokuto-maibun.com/
★浅川伯教・巧兄弟資料館 
 ブログ→
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★平田家住宅  

※令和2年4月より休館日が週2日に変わりました。詳しくは、『アクセス・利用案内』をご覧ください。
※令和元年10月1日より一般・高校生以上の入館料が210円に改定になりました。

2025年12月7日日曜日

《終了しました》令和7年度企画展 「佐久往還、北杜を往く~道に刻まれた千年の足跡~」【北杜市郷土資料館】

 こんにちは!

8月に始まった企画展「佐久往還、北杜を往く〜道に刻まれた千年の歴史〜」も、先週をもってついに終了となりました。

ご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました。


また、会期中に関連イベントもいくつか開催しましたので、その様子をお伝えしたいと思います。


●「佐久往還を歩く」(10/12,10/26)

10月には、展示ではカバーしきれなかったことを学ぶべく、全2回にわたり佐久往還を歩きながら沿道の史跡などを巡りました。

何せ企画展のテーマが「道」ですから、展示室に運び込めない文化財が山ほどあるわけです。

とあるドラマで、若き日の古今亭志ん生が「落語は脚で覚えるものだ」と師匠の橘家圓喬に教わり、来る日も来る日も日本橋と芝を行ったり来たりするシーンがありました。

それと同じで、今回はせっかく佐久往還がテーマなのですから現地へ脚を運ばなければ片手落ちだと思うのです。


そんな思いで開催したイベントは、12日は時折汗ばむほどの快晴、26日はあいにくの小雨スタートでしたが昼には持ち直し、無事ゴールへたどり着くことができました。

佐久往還は国道141号線の元となった街道ではありますが、実際に歩いてみると現代と江戸時代のルートは所によってずいぶん違っていたことを実感できます。

特に清里では、明治までほぼ無人の原野だった場所に道を通し生活を築いた先人の苦労が偲ばれました。

足腰への不安を考慮して長野県側から下るルートを選びましたが、2日間の総移動距離は30km弱ということで、担当した私もお尻が筋肉痛になったのでした・・・。



【12日の主な見学地】

平沢峠→平賀源心の胴塚→平沢城址→八ヶ岳霊園→八ヶ岳分教場跡地→御崎大神社→弘法水→復元長沢口留番所→長沢宿旧問屋・本陣



【26日の主な見学地】

大蔵寺→岩船地蔵(箕輪横森)→道祖神(箕輪海道)→味噌なめ地蔵→平賀源心の墓(首塚)→長泉寺→三輪神社→百観音堂→大豆生田砦


●講演会「佐久を駆け抜け甲州へ〜江戸時代の岩船地蔵流行を探る〜」(11/29)

11月29日には、郷土資料館で講演会を開催しました。

テーマはずばり「岩船地蔵」。

講師には、岩船地蔵研究の第一人者であり国立歴史民俗博物館名誉教授の福田アジオ先生をお招きしました。

福田先生は、『山梨県史』編纂事業をはじめ北杜市で幾度も民俗調査のご経験をお持ちということもあり、今回の講演依頼を快くお受けくださいました。

この場を借りて改めて御礼申し上げます。


さて、そもそも岩船地蔵とは何なのか?

そして佐久往還とどんな関係があるのか?

こちらが岩船地蔵です。

岩でできた船の上に乗っていらっしゃるのがおわかりでしょうか。

北杜市は20体(山梨県全体では70体弱)の岩船地蔵を擁し、岩船地蔵集中地帯といっても過言ではありません。

写真のお地蔵様は高根町内を通る佐久往還のすぐそばに立っています。


岩船地蔵を四半世紀に渡り調査研究された福田先生によれば、栃木市の岩舟山高勝寺に祀られている岩船地蔵は、享保4(1719)年から約2年間に渡り東京・神奈川・山梨・長野県東部・静岡県東部のエリアで爆発的に流行したのだそう。(いわゆる「流行神仏」というやつです)

そして、山梨県へは佐久地方からその流行が南下してきたというのです。

実は、その熱狂の様子は当時の県内外いくつもの文献に記されています。

つまり、岩船地蔵は世にも珍しい「作られた経緯が判明しているお地蔵様」であり、さらに山梨県の場合は佐久往還を通じてもたらされた可能性が高いのです。


今回の講演では、そんな岩船地蔵の基礎知識から、佐久往還との関係性、日本史における岩船地蔵の意義まで、興味深い内容をたっぷりお話しいただきました。

ただし、岩船地蔵流行の記録が残る佐久地方に岩船地蔵がほとんど現存していないことは、大きな謎で今後の課題だといいます。

ここはぜひこの謎を解明して岩船地蔵研究をさらに発展させたいところ・・・!

改めまして、福田先生ならびにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。